R32~R34のGT-Rオーナーにとって、とても気になるメニューだと思われる2.8リットル仕様。今回はブーストアップからのステップアップで2.8リットル仕様に行き着いたユーザーさんの体験談をご紹介します。
BNR34のオーナーである横山さんは、最初はブーストアップからのスタートでした。高ブーストによるハイパワー化は、まさにヘビーなドーピング。それはエンジンだけでなくタービンにとってもヘビーなもので、当然耐久性を引き換えにします。「いずれはガスケット抜けに至りかねないので、どうせガスケットを替えるなら、同時にカムも替えることにしたんですよ」。
カムの交換は、エンジン排気量を上げずに、よりタービンを力強く回す効力があります。横山さんのRB26に組んだカムは264度(IN/EXとも)。カム交換でタービンを回す体力が増したことにより、タービンもステップアップ。GT2530ツインを装着。RB26のチューニングとしては、一通り完成の領域です。
カム交換とGT2530ツインでかなりパワーは上がったものの、それでも絶対排気量は2600cc。カムを替えたとはいえ、エンジン自体の基礎体力はほぼそのままです。
「(色々手を加えても)26は26だなと思って」、横山さんは2.8リットル化を決心。さらなるステップアップを目指すことになりました。
そしてタービンも変更。
「ツインターボのクセがあまり好きじゃないのと、やはり直6らしいサウンドを味わうためには、シングルタービンが一番だと思ったんですよ」。
選んだタービンはTO4Z。基礎体力(排気量)とドーピング(過給)ともにランクアップすることで、RB26では実現できない力強い低速トルクと図太く続く加速力を手に入れました。
さらに、HKS「V CAM」も導入。「アイドリング中はチューンドエンジン独特の荒さがなく、実に静かです。それでいて、アクセルを開ければ進角によるパワフルな加速が続きます」と満足なご様子。
RB26ベースでのチューニングとの違いを、ユーザーの身で言葉にすると、「(2.6リットルでのチューニングとは)まったく次元が違いますね。200km/hからの加速が全然違います。ずっと力強いまま加速します。タービンとのマッチングも良いんでしょうね」とのコト。「1300ccのバイクとゼロヨンで勝てることも大きな魅力です(笑)」。
「私のRはクランクがノーマルじゃないんですよ。よくノーマルクランクのままチューニングを進めて壊してしまう方が居られますが、高ブーストでの耐久性が違いますから、結局は替えておいたほうが経済的でしょうね。
GT-Rはレースで勝つために生まれたクルマですから、床の間で飾っているような乗り方してる人が少なくないのは寂しく思います」と語る横山さん。ブーストアップからステップアップして現仕様に至っていますが、高ブーストやタービン変更によるヘビーなドーピングだけに頼らず、基礎体力とともに全体的にランクアップさせるチューニングを施しているのは、まさにRをRらしく走らせる「正統派」な選択と言えるのではないでしょうか。その一片が、クランクについての考えにあらわれているように思います。
「今のV CAMはSTEP1なので、次はSTEP2を目指したいですね。現在で650馬力ですが、700馬力あたりを狙いたいです」。
■スペック
RB26DETT改2.8リットル仕様/HKS TO4Z/HKS V CAM/HKS F-CON V pro/ほか
最大出力650ps(ブースト1.4km/cm²)